
三菱デリカD:2とスズキソリオ。街中で見かけるコンパクトトールワゴンの中でも、特に人気の高いこの2台ですが、見た目がよく似ているため、どちらを選べば良いか迷っている方も多いのではないでしょうか。両車の具体的な違いを調べてみると、実はこの2台が同じ車、つまりOEM関係にあることが分かります。
しかし、全く同じというわけではなく、細かな仕様や価格設定には明確な差が存在します。購入後に後悔や失敗をしないためには、表面的なデザインだけでなく、どっちが安いかという単純な比較を超えた視点が求められます。例えば、日々の燃費や年間の維持費、そして数年後に手放す際の重要な指標となるリセールバリューまで、総合的に考慮する必要があります。
また、このクラスの最大のライバルであるトヨタ・ルーミーとの比較も欠かせません。2025年最新情報として安全装備がどう進化したのか、この記事ではこれらの疑問に一つひとつ丁寧にお答えし、あなたが最終的にどっちを選ぶべきか、明確な判断基準を提供します。
三菱デリカD:2とスズキソリオの比較を始めるにあたり、まず理解しておくべき最も基本的な事実は、デリカD:2がソリオのOEM供給モデルであるということです。OEMとは「Original Equipment Manufacturer」の略で、日本語では「相手先ブランドによる生産」と訳されます。つまり、スズキが製造したソリオを、三菱が自社ブランドの「デリカD:2」として販売している、という関係性になります。
このため、両車の根幹を成す部分は完全に共通化されています。搭載されるパワートレインは、1.2リッターの直列4気筒エンジンとモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドシステムです。トランスミッションであるCVTや、乗り心地を左右するシャシー、サスペンションの設計に至るまで、機械的な部分はすべて同じものです。
したがって、カタログスペック上の走行性能や燃費、そして運転した際のフィーリングに本質的な差は生まれません。また、ボディサイズや室内の広さといった寸法も全く同一であり、どちらか一方が物理的に広い、あるいは狭いということはありません。言ってしまえば、エンブレムを隠してしまえば、多くの人にとっては見分けることが難しいほど、この2台は「同じ車」なのです。
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デリカD:2とソリオは基本骨格を共有する兄弟車ですが、購入を決定する上では見過ごせない細かな違いがいくつか設定されています。これらの差異を理解することが、自分にとって最適な一台を選ぶための鍵となります。
最も大きな違いは、グレードのラインナップにあります。スズキ・ソリオは、購入しやすい価格帯の純粋なガソリンエンジンモデル「G」をエントリーグレードとして設定しています。これに対して、三菱デリカD:2はガソリンモデルを持たず、全てのグレードがマイルドハイブリッド車からのスタートとなります。このため、最も安価なモデルで比較した場合、ソリオの方が初期費用を抑えることが可能です。三菱は装備を充実させたマイルドハイブリッド専用車とすることで、ソリオとの直接的な価格競争を避け、少し上の層を狙う戦略をとっていると考えられます。
※ソリオのGグレードは、2023年5月に販売が終了しました。Gグレードのソリオの中古車をお探しでしたら、中古車情報サイトなどで探すことができます。
フロントグリルやテールゲートのエンブレムが違うのは当然ですが、それ以外にも細部で差別化が図られています。特に注目したいのがボディカラーです。多くの色は共通ですが、デリカD:2とソリオには、それぞれにしか設定されていない専用色が存在します。例えば、デリカD:2カスタムには専用の2トーンカラーが用意されており、これがデザインを重視するユーザーにとっては決定的な選択理由になることがあります。
内装においても、デリカD:2カスタムではエアコンの吹き出し口周りの加飾がチタンシルバーに変更されるなど、微妙な違いで室内の雰囲気を変えています。
一般的に、ベースモデルであるソリオの方が、メーカーオプションやディーラーで装着できるアクセサリーの種類が豊富に用意されている傾向があります。内外装を自分好みにカスタマイズしたい場合や、特定の機能を持つアクセサリーを求めている場合は、ソリオの方が選択の幅が広いと言えるでしょう。
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2025年モデルとして、ソリオとデリカD:2は共に重要なマイナーチェンジを実施しました。この改良は、単なる年次更新にとどまらず、両車の魅力をさらに高める内容となっています。
最大の変更点は、エクステリアデザイン、特にフロントマスクの刷新です。市場のトレンドを反映し、より存在感のある力強いデザインへと変更されました。これは、競合車であるトヨタ・ルーミーのアグレッシブなスタイルを意識した動きと分析できます。新しいバンパーデザインの採用により、全長がわずかに20mm延長されましたが、日本の道路事情で重要な全幅や最小回転半径は維持されており、取り回しの良さは損なわれていません。
もう一つの柱は、先進安全装備の大幅な進化です。スズキの「スズキ セーフティサポート」および三菱の「e-Assist」は、中身としては同一のシステムですが、2025年モデルから「デュアルセンサーブレーキサポートII」へとアップグレードされました。これは従来の単眼カメラとレーザーレーダーの組み合わせから、単眼カメラとミリ波レーダーの組み合わせに変更されたもので、検知性能が向上しています。
この最新システムでは、交差点での右左折時に、対向車や横断する歩行者・自転車を検知して衝突被害を軽減する機能が追加されました。また、ドライバーに信号の色の変化を知らせる機能も備わり、安全運転をより強力にサポートします。
これらの改良は、デザインの現代性と安全性の向上という明確な付加価値をもたらしますが、同時に車両価格の上昇にもつながっています。このため、最新の安全性を取るか、価格がこなれた旧モデルを選ぶかという視点も、購入検討の際には大切になります。
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デリカD:2とソリオを検討する上で、最大のライバルであるトヨタ・ルーミーとの比較は避けて通れません。これら3車種は似たようなサイズ感ですが、車の設計思想に根本的な違いがあります。
デリカD:2とソリオが、滑らかさと静粛性に優れる1.2Lの4気筒マイルドハイブリッドエンジンを搭載しているのに対し、ルーミーは1.0Lの3気筒エンジンを搭載しています。ルーミーには自然吸気(NA)モデルと、より力強いターボモデルの2種類が用意されているのが特徴です。
特にルーミーのターボモデルは、デリカD:2/ソリオを上回る動力性能を発揮し、高速道路での合流や追い越し、多人数乗車時の坂道などで余裕のある走りを実現します。一方、燃費性能やエンジン回転の滑らかさ、静粛性という点では、4気筒エンジンを積むデリカD:2/ソリオに分があります。
室内空間の広さでは、室内長と室内高で勝るデリカD:2/ソリオが有利です。しかし、ルーミーは最小回転半径が4.6mと、デリカD:2/ソリオの4.8mよりも小さく、より狭い道でのUターンや車庫入れがしやすくなっています。
また、後席の設計思想に決定的な違いが見られます。デリカD:2/ソリオの後席は左右50:50分割で、アームレストも備わるなど2名乗車時の快適性を重視した作りです。対照的に、ルーミーは60:40分割で中央席のヘッドレストも備え、後席に3名が座る状況をより考慮した設計と言えます。
項目 | 三菱 デリカD:2 / スズキ ソリオ | トヨタ ルーミー | 備考 |
---|---|---|---|
エンジン | 1.2L 直列4気筒 + マイルドハイブリッド | 1.0L 直列3気筒 (NA / ターボ) | 滑らかさのソリオか、パワーのルーミーか |
最小回転半径 | 4.8m | 4.6m | ルーミーの方が小回りが効く |
後席構造 | 50:50分割 (2名乗車重視) | 60:40分割 (3名乗車も考慮) | 乗車人数で選択が変わる |
年間自動車税 | 30,500円 (1.2L) | 25,000円 (1.0L) | ルーミーの方が税金は安い |
独自装備 | スリムサーキュレーター | - | ソリオ/D:2は後席の快適性が高い |
このように、滑らかさと燃費、後席2名の快適性をとるならデリカD:2/ソリオ、力強い走りと小回り性能、後席3名乗車の機会が多いならルーミー、という明確な選択基準が存在します。
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車両の初期費用を比較する際、デリカD:2とソリオではどちらが安いのでしょうか。ここでは、両車の価格設定を具体的に見ていきます。
結論から言うと、選択肢全体で見た場合、スズキ・ソリオの方が安価なモデルを手に入れることが可能です。これに対し、デリカD:2は最も安価なグレードでも価格帯が一段上に設定されています。
以下に、2025年モデルの2WD車の価格例を示します。
ブランド | グレード名 | 価格(税込) |
---|---|---|
ソリオ | HYBRID MG | 1,926,100円 |
ソリオ | HYBRID MX | 2,051,500円 |
ソリオ | HYBRID MZ | 2,248,400円 |
デリカD:2 | HYBRID MX | 2,101,000円 |
デリカD:2 | HYBRID MZ 全方位カメラ付ナビパッケージ | 2,517,900円 |
この表からも分かるように、同じ「HYBRID MX」というグレードで比較しても、デリカD:2の方がソリオよりも約5万円高い価格設定です。三菱は、ソリオのエントリーグレードをラインナップから外すことで、デリカD:2を装備の整った上級志向のコンパクトワゴンとして位置づけ、ブランドイメージを差別化する戦略をとっているのです。
したがって、単純に初期費用をできるだけ抑えたいと考えるのであれば、ソリオの方が有利な選択となります。
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自動車を所有する上では、車両本体価格だけでなく、長期的にかかる維持費も重要な判断材料になります。デリカD:2とソリオの燃費や税金について見ていきましょう。
デリカD:2とソリオのマイルドハイブリッドモデルは、同じパワートレインを搭載しているため、カタログ燃費(WLTCモード)は基本的に同一です。2WDモデルで22.0km/L(一部グレードは19.6km/L)となっており、このクラスのトールワゴンとしては非常に優れた数値を実現しています。
ただし、これはあくまでカタログ値であり、実際の燃費は運転スタイルや道路状況によって変動します。一般的には、市街地走行を中心に実燃費で17km/L前後が一つの目安と考えられます。高速道路での巡航ではさらに伸びる可能性がありますが、いずれにしても両車で燃費性能に差はないと考えて問題ありません。
自動車税はエンジンの排気量によって決まります。デリカD:2とソリオは共に1242ccのエンジンを搭載しているため、1.0L超1.5L以下の区分に該当し、年間の税額は30,500円です(新規登録後の軽減措置終了後)。これも両車で全く同じです。
その他、車検時に支払う自動車重量税や自賠責保険料も同等であり、オイル交換などのメンテナンス費用にも大きな差は生じません。
これらのことから、燃費や税金といった日々のランニングコストにおいて、デリカD:2とソリオの間に有利・不利は存在しないことが分かります。維持費の観点では、完全に同条件で比較検討できると言えるでしょう。
少しでもお得に車を購入するためには、値引き交渉が欠かせません。デリカD:2とソリオの値引きを引き出す上で、効果的な戦略が存在します。
まず、目標とすべき値引き額ですが、両モデルともに車両本体からの値引きで15万円から20万円前後、ディーラーオプションなどを含めた総額では20万円以上を目指すのが現実的なラインとされています。
最も効果的な方法は、競合車種の見積もりを取得して交渉に臨むことです。デリカD:2を検討している場合はスズキでソリオの見積もりを、ソリオを検討している場合は三菱でデリカD:2の見積もりを取ります。そして、両者にとって最大のライバルであるトヨタ・ルーミーの見積もりは、極めて強力な交渉材料となります。「ルーミーはこれだけの値引きを提示してくれている」という事実が、ディーラーの担当者からより良い条件を引き出すための強い後押しになるのです。
もしお住まいの地域に、経営母体の異なる同ブランドのディーラー(例えば「スズキA店」と「スズキB店」)があれば、両方を訪れて競わせることも有効な手段です。
値引き交渉をする際は、車両本体の値引き額だけでなく、付属品の割引や下取り車の査定額など、全てを含めた「最終的な乗り出し総額」で話を進めることが大切です。本体の値引きが大きくても、他の部分で調整されていては意味がありません。最終的に自分がいくら支払うのか、という一点に集中して交渉を進めましょう。
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新車購入時には見落としがちですが、数年後に車を売却する際の価値、すなわちリセールバリューは、車の総所有コストに大きな影響を与えます。デリカD:2とソリオでは、このリセールバリューに明確な差が存在します。
この点においては、スズキ・ソリオがデリカD:2よりも著しく高いリセールバリューを維持する傾向にあります。これは、両車の市場における立ち位置が大きく関係しています。
ソリオは、このクラスのパイオニアとして広く認知されているオリジナルモデルです。販売台数も非常に多く、中古車市場での人気と需要が高い状態が続いています。需要が高ければ、当然ながら買取価格や下取り価格も高値で安定します。
一方、デリカD:2はソリオのOEMモデルであり、どうしても「本家」であるソリオの陰に隠れがちです。知名度が低いため中古車市場での指名買いが少なく、需要が限られることから、ソリオと比較して買取価格が低くなる傾向が否めません。
このリセールバリューの差は、長期的な視点で見ると非常に重要です。たとえ購入時の値引き交渉でデリカD:2をソリオより数万円安く手に入れられたとしても、3年後や5年後に売却する際、リセールバリューの差がその数万円を上回ってしまう可能性が高いのです。結果として、トータルの出費ではソリオの方が安かった、というケースは十分に考えられます。
財務的な合理性を最優先するならば、リセールバリューの観点からソリオを選ぶ方が賢明な判断と言えるでしょう。
これまでの比較で、価格の選択肢やリセールバリューの面でソリオが有利であることが分かりました。それでは、どのような場合にあえてデリカD:2を選ぶ価値があるのでしょうか。ここでは、デリカD:2を選ぶメリットと、認識しておくべきデメリットを整理します。
最大のメリットは、ディーラーとの関係性にあります。もしあなたが長年付き合いのある信頼できる三菱のディーラーや営業担当者がいる場合、車という高価な買い物や購入後のメンテナンスを安心して任せられるという価値は、数万円の価格差やリセールバリューの不利を上回る可能性があります。
また、デザインの好みも大きな理由になり得ます。前述の通り、デリカD:2には専用のボディカラーや、内装の細かな加飾が設定されています。もしその特定の色やデザインに強く惹かれるのであれば、それはデリカD:2を選ぶための十分な動機となります。性能が同じであるからこそ、こうした感性的な部分が選択の決め手になるのです。
一方で、デメリットは主に経済的な側面に集中します。同等のグレードで比較した場合に車両本体価格がやや高いこと、そして最も大きな点が、将来的なリセールバリューがソリオに比べて低いことです。この経済的な不利を理解し、納得した上で選択する必要があります。また、グレードやオプションの選択肢がソリオに比べて限られている点も、人によってはデメリットと感じるかもしれません。
要するに、デリカD:2を選ぶという決断は、経済的な合理性よりも、ディーラーとの信頼関係や個人のデザインへのこだわりといった、数値化しにくい価値を優先する場合に正当化されると言えるでしょう。
ここまで様々な角度からデリカD:2とソリオを比較してきましたが、最終的にどちらを選ぶべきかは、あなたの価値観や車の使い方によって決まります。ここでは、購入者のタイプ別に最適な一台を提案します。
長期的なコストパフォーマンスを最も重視するならば、選ぶべきはスズキ・ソリオです。より安価なエントリーグレードの存在と、将来的に有利になる高いリセールバリューは、総所有コストを最小限に抑えたいと考えるあなたにとって、最も説得力のある理由になります。市場での人気と実績という安心感も大きな魅力です。
もし、デリカD:2にしかない専用ボディカラーや、三菱のスリーダイヤのエンブレムに特別な魅力を感じるのであれば、デリカD:2は有力な選択肢です。また、長年付き合いがあり、サービスに満足している三菱ディーラーがある場合も同様です。リセールバリューの経済的な不利を理解した上で、それを上回る価値を「所有する満足感」や「購入後の安心感」に見いだせるのであれば、デリカD:2を選ぶことは十分に合理的な判断です。
もし、あなたの車の主な用途が高速道路での移動や、頻繁な長距離ドライブであるならば、一度立ち止まってトヨタ・ルーミーのターボモデルを検討することをお勧めします。デリカD:2/ソリオは街乗りでの快適性に優れる一方、高速域での力強さや横風に対する安定性には課題があるという声も聞かれます。より余裕のある動力性能を求めるなら、ルーミーのターボモデルの方が、あなたの使い方に適したツールである可能性が高いです。
この記事では、三菱デリカD:2とスズキソリオの違いについて、多角的に比較・解説してきました。最後に、今回の重要なポイントを箇条書きでまとめます。